IECExシステムの概要


平成27年12月1日
公益社団法人 産業安全技術協会

1 はじめに


 IEC規格を適用規格とした、防爆機器の分野における国際的な認証システムで、平成27年10月31日現在、次の4つのスキームが運用されています。当面わが国に関係するのは「機器認証スキーム」です。

・ 機器認証スキーム(防爆機器の試験・認証)

・ サービス施設認証スキーム(防爆機器の修理・保守を行う事業所を認証する)

・ 要員認証スキーム(防爆機器関連分野の専門家を認証する)

・ 適合マーク ライセンス システム(機器認証スキームの適合証を有する製品に適合マークを表示することを許可するライセンスを発行する


 機器認証スキームでは、1種類の規格(原則IEC規格)と1種類の試験・認証の仕組みを用いて、

-One Test (試験は1回だけ)

-One Certificate (適合証は1枚だけ)

-One Mark (適合マークは1種類だけ)

という認証制度による防爆機器の国際交易の促進を目標としています。

2 IECExへの加盟国


 平成27年10月31日現在、加盟国は33ヵ国で、わが国は平成17年に25番目の国として加盟しました。IECExへは、各国1団体だけがNational Member Bodyとして加盟するルールで、わが国の加盟団体は「日本工業標準調査会」(Japanese Industrial Standards Committee; JISC; 窓口は経産省産業技術環境局基準認証ユニット)、国内審議団体は「IECExシステム国内審議委員会」(事務局は産業安全技術協会)です。

3 機構


 IECExの中核は、役員等と加盟各国の代表から構成される管理委員会(Management Committee; MC)で、MCはIECの適合性評価評議会(Conformity Assessment Board; CAB)の監督下にあります。

 試験評価グループ(Ex Testing and Assessment Group; ExTAG)は、IECExに受け入れられた全ての認証機関(ExCB)と試験機関(ExTL)が構成メンバーとなり、IECExの技術的側面を担当しています。

 IECExのMCとExTAGには、それぞれ、特定の課題について検討したり、規則・手順書を草案したりするWGが設けられています。
 また、ExTAGの他、ExMarkCo(IECEx Conformity Mark Committee:適合マーク委員会)、ExPCC(IECEx Personnel Certification Committee:要員認証委員会)、ExSFC(IECEx Service Facilities Committee:サービス施設委員会)等が設けられております。

【以下、「機器認証スキーム」についての概要】

4 IECExの諸規則


IECEx 01: 2013 (6.1th ed.), Basic Rules: 参加資格、組織等を定めた基本則

IECEx 02: 2015 (5.2th ed.), Rules of Procedure: 機器認証スキームの実施規則

Operational Documents (ODs): 認証、適合証発行、ExCB/ExTLの審査、メーカーの品質システムの審査などについてそれぞれ定めた、加盟国・機関が共通に使用する手順書


5 認証の仕組み

5.1 認証のタイプ


 認証は、型式試験と、その型式の製造工程に適用される品質管理システムの審査からなります。型式試験は、防爆構造の種類ごとのIEC規格に従って行われます(ExTLが実施)。一方、品質管理システムの審査は、ISO 9001をベースにして防爆機器への適用を追加した IECExの手順書(ISO/IEC80079-34)に基づいて行われます(ExCBが実施)。

 型式試験に適合すれば、ExTLが作成し、ExCBが保証した「試験報告書」(ExTR)が発行され、また、品質管理システムが要件を満たせば「品質報告書」(QAR)が発行されます。 さらに、この両者をもとに「IECExシステムの適合証」(IECExCoC)が発行されます(これらはExCBが実施)。申請者(防爆機器のメーカー等)は、ExTR又はQARだけの発行を求めることもできます(下図参照)。

5.2 適用規格


 認証に当たっては、IECの技術委員会TC31で作成した防爆構造ごと(又は電気機器の種別ごと)の規格であってIECExが運用する規格のうち、現行版とひとつ前の版を適用します。ひとつ前の版を適用するのは、規格の改正があった場合の過渡的な状況に対応するためです。

 労働安全衛生法の下での電気機械器具防爆構造規格に規定されているガス・蒸気を対象とする防爆構造の種類(耐圧、内圧、安全増、油入、本質安全、樹脂充てん、非点火の各防爆構造)は、全てIECExの運用する規格に含まれています。IEC規格にも粉じん防爆構造の規格はあり、IECExでも運用していますが、電気機械器具防爆構造規格の規定内容(粉じん防爆普通防じん構造、粉じん防爆特殊防じん構造)とは別物です。

5.3 ExCBとExTL


 ExTL(試験機関)は試験を行い、ExTR(試験報告書)を作成します。

 ExCB(認証機関)は、ExTRを保証した上で、申請者に向けてExTRを発行します。また、メーカーの品質システムを審査してQAR(品質報告書)を発行します。さらに、ExTRとQARをもとにIECExCoC(システムの適合証)を発行します。

 ExCBだけの機関も、ExTLだけという機関もあり得ます。ExCBとExTLが同じ実体であってもよいですが、その場合はExCBとExTLの機能は組織内で区別されていなければなりません。ExTLとしての機関は、複数のExCBと契約して試験を行うことができます。

5.4 Fast Track Process


 IECExのExTRは、ある型式の防爆機器が特定のIEC規格に定める試験に適合することを証するものですが、世界各国の検定(認証・試験)の基準となる規格はIEC規格とは限らず、仮にIEC規格に整合・準拠していたとしても、それがIEC規格の最新版に対応しているとは限りません。 すなわち、国ごとに規格に差異(National Differences)があり得ることになります。

 そこでIECExでは、「ExCBとなった機関は、外国のExCBが発行したExTRを受け入れて、自国の規格に合わない部分については追加の試験・評価を行って、自国で有効な適合証(検定合格証)を発行する」というルールを設けています。これによって、外国製品に対する検定所要時間が短縮されることが期待されることから、この仕組みをFast Track Process又はFast Track Pathと呼んでいます(IECEx 02のINTRODUCTIONのIECEx options b)、及び5.5、10.1に関連の記述あり)。

 Fast Track ProcessはIECExシステムと各国の検定(認証)制度とのインターフェイスであり、それはExCBとなることができるのは自国の防爆機器の検定を行う機関に限定されていることを意味します。

5.5 National Differences


 IECExは各国の規格とIEC規格との差異を各国のメーカーや認証機関・試験機関に知らせるために、IECEx Bulletinを適時(不定期)出版しています(平成27年10月31日現在、第4版が最新版ですが、第5版の出版に向けて準備が進められています。)。

 なお、わが国の検定においては、工場電気設備防爆指針(国際規格に整合した技術指針)JNIOSH-TR-46-1~-9(2016年2月末までは、工場電気設備防爆指針(国際規格に整合した技術指針2008)が審査に用いられる場合があります。)が用いられますが、これらの指針はIEC規格に準拠しているものの、わが国の検定制度に基づく認証システムの違いやIECExが現在運用する版とその内容との差異等から、National differences が存在しています。

 National differencesの内容につきましては、 IECExにおけるわが国のNational Member BodyであるJISC(Japanese Industrial Standards Committee/日本工業標準調査会)からIECEx事務局へ提出したNational differencesの資料(List of National Differences他)をご参照ください。

6 ExCB

6.1 ExCBの数


 平成27年10月31日現在、加盟33ヵ国のうち25ヵ国に51のExCBが認められており、トルコの認証機関が申請中です。なお、ExCBのない国は8ヵ国(インド、マレーシア、ニュージーランド、ルーマニア、シンガポール、スペイン、トルコ、アラブ首長国連邦)です。

 ExCBには、ISO/IEC17065 (製品認証機関に対する一般要求事項)の要求事項への適合が求められます。ただし、この規格についてNational Accreditation(認定)を有することは求められていません。

6.2 ExCBは何ができるか、また、何をしなければならないか


・ 日本の防爆機器メーカーに対して、その製品がIEC規格に適合することを証する適合証を発行することができます。また、関係するExTR又はQARの発行もできます。これにより、日本のメーカーが諸外国のマーケットに進出することを支援できます。


・ 外国のExCBが発行したExTRを受け入れて、国内の検定に活用することが求められます。

これはExTRをそのまま受け入れるという意味ではなく、日本の規格・基準に合わない試験や疑義のあるデータについては、別途試験・検証を行うことを前提として、 規格・基準が同じ試験についてはできるだけExTRを活用する(実地の試験を略する)ことを意味します。なお、ExTRの受け入れについては、ExCB間における同等の立場での相互受け入れです。


7 ExTL


 平成27年10月31日現在、ExTLは加盟33国のうち25ヵ国に58のExTLが認められております。なお、ExTLのない国は8ヵ国(ブラジル、マレーシア、ニュージーランド、ルーマニア、シンガポール、スペイン、トルコ、アラブ首長国連邦)です。

 ExTLには、ISO/IEC 17025 (試験所及び校正機関の能力に関する一般要求事項)への適合が求められます。ただし、この規格についてNational Accreditationを有することは求められていません。